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「リジリエンシー」を強みに、成果主義をスタンダートに。女性リーダーが描くこれからの日本の「女性活躍」の未来|吉田晴乃さん

2016年7月 27日

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経団連初の女性役員となり、日本の経済界をリードするBTジャパン代表取締役社長吉田晴乃さん。女性リーダーとして、現在の日本の働く女性の現状について、また多様な環境に対応する未来の働き方について、どのように考察されているのでしょうか。具体的なご自身のアイデアを交えてお話しいただきました。


「女性の活躍」「女性が輝く」という言葉は当の女性にとっては抽象的すぎる

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今の日本の女性活躍に関する現状の課題をどのように見ていらっしゃいますか?

最近「女性が活躍する時代」や「女性が輝ける社会」というような言葉をよく耳にしますが、「私、輝いてないの?幸せじゃないの?」という女性からの声をよく聞くことがあります。ひと言で「女性が輝く」と言っても抽象的な言葉でよくわからないんですね。

ビジネスは結果を数字で表していくゲーム。勝ち負けのあるスポーツと一緒です。経済界だからこそ、わかりやすい成果の形もって、女性の “輝く” を表現すべきだと思うのです。

ウーマノミクスも 3 年目、次の 50 年で 3000 万人の労働力人口低下という危機にあり、投資家たちが聞きたいのは企業の持続的な成長プラン、何%の GDP アップといったクリスプな話です。ウーマノミクス=ウーマン+エコノミクス。つまり、女性の活躍がもたらす経済効果を明確に数字で表現するステージがきているのです。


会社への貢献度を数値化すれば、正当に個人を評価できる


Women Willのアイデアには「時間ではなく成果で正当な評価を」というものがあります。働き方の多様化を推進する意味でも、成果主義が要となるでしょうか?

仕事においても、自分の成功の形を数値化する、つまりわかりやすい成果で表現していくことが、もっと求められる時代になると思いますね。そして成果を表現しやすいように評価軸を設定してあげるのが上司の役割だと思うのです。活躍する、貢献する、頑張るという曖昧な定義を会社の期待値を評価軸、目標軸で明確にし、成果を見える化する。成果にフォーカスする環境で、男性も女性も関係のない社会になっていくのではないでしょうか。

私自身、2011 年に CEO に就任した時は戸惑いもありました。でも、CEO のポジションは数字がすべて。スコープが決まっているからこそ、成果があげられる。スポーツと一緒です。テニスのコートがあるからこそ、そのなかでのの勝ち負けですよね。そしてその中で数字を、点数をあげてさえいれば、いいプレーヤーといわれるんです。そう考えると、数字がすべてであるということは厳しいようでいて、最高の安堵にもなる。休もうが、時短勤務だろうが、プレーの仕方はだれも文句言われる筋合いない。これぞ女性の解放です。

BT ジャパン社内においてはその他にダイバーシティに関わるどのようなことを意識され、そして実践されているのでしょうか?

多様な人材の活用とはつまり、いろいろな環境下にある社員にどうやって効率的に働いてもらうか。育児だったり、介護だったり、体調だったり、交通渋滞だったりと、さまざまな事情のハンドリングであると思います。その人の環境をどうハンドリングしてあげてプロダクティビティを引き出すか。これが賢い経営者に求められていること。それを IT を駆使したり、フレックスタイム制、育休、在宅勤務などの人事制度に落としこむ。それがマネジメント側の役割です。

ICT環境 の整備は最重要です。会わなくてもバーチャルで仕事することができる ICT の世界には時間と距離の概念がない。いつでもどこでもちょこちょこ時間を使って仕事ができる環境はつもりつもればすごい生産性につながります。また、このバーチャルな世界ではジェンダーも関係ない。見えないですから。以前の経験をお話しすると、私がずっとメールベースで仕事をしていたメンバーと初めての会議をすることになり、遅れて到着した際に「ごめんなさい、遅れて」と言ったことがありました。そうすると、その場の出席者から「いいんだよ、私たちは Mr.Yoshida を待っているんだ」なんて言われたんですね。彼らは日本法人の社長という先入観から、男性が来るとばかり思っていたようです。私だってメールだけでやりとりしている相手の韓国やインド人の名前だけ見て男性か女性かなんてわかりませんし、国籍だって、どこの時間帯にいる人かさえわからないこともたくさんあります。でも仕事はちゃんとできるわけです。

採用において私が一番重要視する点は人間としての品性、成熟度。ここは会社に入ってから時間をかけても矯正できるものではないので最重要視です。あとは会社のビジョンと本人のキャリアベクトルがあっていること。この 2 つがあれば相当いい仕事ができます。職務要件定義に期待されるスキルは羅列しますが、ジェンダー、年齢、国籍はありません。結果として、社内ではとても多様な人材が活躍しています。ひとつ自信もって言えるのは「上から目線の男性」は存在しないのです。私、社長がそういうカルチャー許さないから(笑)。これは、はっきりと断言できますね。


母親でありながら代表として、そして経団連初の女性役員としてリードしていくご経験のなかで、他の働く女性たちの未来のヒントになるようなことを教えていただけますか?

日本の女性リーダーのロールモデルが少ない中では、パイオニアとしてのプレッシャーはあります。経団連の役員の会議では、財界の錚々たるリーダーがそろっていて、その中で発言するのは、とても勇気がいること。その怖さ故に魂から突き上げるように出てくる声って、ものすごい力で。人間の「リジリエンシー(耐性)」が未知の能力を発揮する瞬間を経験しています。

私自身、ワーキングマザーという環境で、迷いまくってボロボロだった時期が本当に長かったのです。悩みつづけた日々です。でも人間の生きていこうとする DNA ってすごくて結局前を向いて立ちあがり歩き出すことを決断するんですね。自分で決めた道。娘をかかえて前に進むしかない。いつかきっと娘にも理解してもらうためにも中途半端なことはするもんか。

よくぞここまで来た、と自分を肯定できるようになるのに 20 年かかりました。でもワーキングマザーとしてのつらかったあの日々に、リーダーとして一番重要な素養、リジリエンシーを培ったと思っています。世界で本当に優秀な人々をたくさん見てきました。でも最後の最後でその強さがなくてつぶれて行ってしまう人もたくさんいた。長い社会人生活の中でこの強さがすごいスパートになり何年間かのブランクなんてアッという間に埋めることだってあるんです。だから頑張って!と伝えたいですね。


トップが女性であるということ。そして、「権化となる」というトップダウンの形


最後に、女性リーダーとして、働く女性のロールモデルとして、日々意識され、目指していることを教えてください。

私は自分自身を「オフィスの雰囲気の権化」であると思っています。

会社を伸ばしたいのであれば、一番の近道は、自分が伸びることなんです。誰よりもトップ自身が満足して働くことで、会社全体の空気は変わり、個人が「活躍する」という雰囲気ができてくると思います。細かいことをいろいろ言うマイクロマネジメントより、トップがたゆまず上をめざす緊張感は社員に伝わり会社を伸ばします。伸びようと思う人には伸びる業績がついてきます。そういう精神論みたいなものを、業績評価の仕組みに落とし込むことで正の PDCA サイクルになり、持続的な企業カルチャーとなります。

そして私は私自身が「いい世の中になってきた」と実感することが、女性リーダーとしての最高の貢献だと思っています。私の実感が世の中にまた反映されるからです。実感するためには、自分の貢献を言葉だけのシンボリックなものではなくて、数字でわかりやすく成果を見える化し自分自身を納得させること。自分が自分の輝かし方を自分で選択し、輝くをわかりやすく表現し、自分で納得し、喜ぶこと。これが最高の影響力だと思います。

今は安倍政権のリーダーシップと、経団連榊原会長のタイアップ、この両輪でこれまでにない働く女性にむけた機運があります。過去 50 年を考えても経験したことのないそんな機運のなかで、私自身が最高に楽しんでいますし、そして周囲にも「この機運に乗れ!」というメッセージを送りたいですね。

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